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1832年にストラスブールで生れ
1883年に没したギュスターヴ・ドレは
ヴィジュアル時代の幕を開け
視覚表現史に大きな足跡を残した偉大な
そして不思議な表現者だ。
油絵の技量においては歴史的な画家に匹敵するほどの
ダイナミックかつ繊細な筆力をもっていたが
音楽にも造詣が深くヴァイオリンの名手でもあり
オッフェンバックの友人として
オペラの舞台美術を手がけたこともある。
また山登りや旅を好む冒険家でもあったが
当時、画壇から酷評されて作品の展示場所がなかった
後に印象派と呼ばれることになる画家達のために
友人の写真家ナダールを説得して
印象派の最初の展覧会を
彼のスタジオで開催させたりもしている。
どうやらドレは人間としてのバランスがよくとれ
全てにおいて秀でた
いわゆるルネサンス・マンだったようだが
そんな彼が、自らの才能と情熱を注いだのは挿画だった。
精緻な木口木版を駆使してドレは
視覚化されたシーンの展開によって物語るという方法を編み出し
「神曲」や「聖書」などの
ヨーロッパを代表する古典文学を視覚化した。
ドレが描いたリアルなイメージの数々は
映画などにも多く使われ
すでにヨーロッパ人の共通イメージの深層を形成している。
その意味ではドレは
マスイメージということを明確に意識した最初の
ヴィジュアルアーティストでもあった。
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言葉から情景を思い浮かべることのできる不思議
画という平面から架空の物語をリアルに感じ取れる不思議
さまざまな媒体〔メディア)を駆使し
そこから心の中にもう一つの現実を作り出せる
人間の持つ力の不思議