2009年10月18日日曜日

ギュスターヴ・ドレ  Gustave Doré


1832年にストラスブールで生れ
1883年に没したギュスターヴ・ドレは
ヴィジュアル時代の幕を開け
視覚表現史に大きな足跡を残した偉大な
そして不思議な表現者だ。
油絵の技量においては歴史的な画家に匹敵するほどの
ダイナミックかつ繊細な筆力をもっていたが
音楽にも造詣が深くヴァイオリンの名手でもあり
オッフェンバックの友人として
オペラの舞台美術を手がけたこともある。
また山登りや旅を好む冒険家でもあったが
当時、画壇から酷評されて作品の展示場所がなかった
後に印象派と呼ばれることになる画家達のために
友人の写真家ナダールを説得して
印象派の最初の展覧会を
彼のスタジオで開催させたりもしている。
どうやらドレは人間としてのバランスがよくとれ
全てにおいて秀でた
いわゆるルネサンス・マンだったようだが
そんな彼が、自らの才能と情熱を注いだのは挿画だった。
精緻な木口木版を駆使してドレは
視覚化されたシーンの展開によって物語るという方法を編み出し
「神曲」や「聖書」などの
ヨーロッパを代表する古典文学を視覚化した。
ドレが描いたリアルなイメージの数々は
映画などにも多く使われ
すでにヨーロッパ人の共通イメージの深層を形成している。
その意味ではドレは
マスイメージということを明確に意識した最初の
ヴィジュアルアーティストでもあった。


言葉から情景を思い浮かべることのできる不思議
画という平面から架空の物語をリアルに感じ取れる不思議
さまざまな媒体〔メディア)を駆使し
そこから心の中にもう一つの現実を作り出せる
人間の持つ力の不思議