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リカルド・ボフィルの都市建築設計チーム
タジェール・デ・アルキテクトゥーラの筆頭建築家である
ジャン・ピエール・カルニョーは
身長が203cmもあるけれども
優しく繊細な感性を持つフランス人の天才建築家だ。
ソルボンヌ大学で数学を学んだが
その後MIT(マサチュセッツ工科大学)で学んで建築家となり
イビサ島にドロップアウトした後
リカルド・ボフィルと共に仕事をするようになり
彼のパートナーとして世界中に多くの優れた建築を創ってきた。
言語感覚も優れていて
フランス語やスペイン語はもちろん
英語、イタリア語もネイティヴのように読み書きできるし
ロシア語もかなり話せる。
家柄も大変良いので
一般的には超エリートと言うしかないのだが
しかし彼自身にはエリート意識のようなものは全くなく
スノッブなところなど微塵もない。
2歳年下の彼のことを私はアルカンヘル(大天使)JPと呼び
まるで兄弟のようなつきあいをしているが
リカルド、ジャン・ピエールと一緒に空間を創っていくのは
スピーディでダイナミックでクリエイティヴ
かつポエティックで実に気持ちが良い
リカルドと私が言うことを、目の前で彼はどんどん
手書きで空間化していくのだが
その手の動きが美しく
まるで交響曲を生みだす指揮者のような
あるいはリンクの上のフィギュアスケーターのような
滑らかな動きにつれて白い紙の上に
空間が浮かび上がっていくさまはまるで魔法のようだ。
そんな彼が、ある日私に言った言葉が面白い。
あるプロジェクトで
クライアントとちょっとした言い争いがあった夜
バーでブランディを飲みながら
彼が哀しそうな表情でこんなことを言い出した。
「人はどう思っているかしらないけれど
僕は本当に何も持っていない。
奥さんもいなければ子どももいない。
家だって借家だし
リカルドやお前のように
クライアントにちゃんとものを言うような強さもない……。」
それを聞いて私は思わず吹き出してしまった。
クライアントをうまく説得できなかったことが哀しかったのだ。
なんて優しい心の持ち主だろうと私は思った。
一緒に仕事をした東京銀座資生堂ビルでも
その竣工式に彼はメッセージを持参してきたが
そこには、関係した多くの人々への感謝とともに、最後に
こんな一行が添えられてあった。
「名前を知ることはできなかったけれど、この空間を創る為に
このビルの影で、あるいは暑い太陽の光の下で
共に働いてくれた人たちに心からの感謝を捧げます。」
彼が創りだす空間には
それが大きくても小さくても
彼のこうした心根が、つまりは愛が宿っているように思う。
だから逆に、フランスの古都モンペリエで実現したような
街の面積の半分を占める巨大な街創りも可能なのだろうと思う。
彼がモンペリエのプロジェクトのために描いた
巨大なマスタースケッチは
現在、ニューヨークのメトロポリタン美術館の
建築デッサン展示室に飾られている。
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だれでも心のどこかかに
もうすこしはましな自分になりたいという想いを
そっと抱いて生きている
そんな想いが自然に
無意識のうちに表ににじみ出てきて
しらず心が晴れていくような
そんな街や建築や空間を
創りだすことができないだろうか。