2011年7月10日日曜日

日本人の感覚のなかにある危険性


Photo by Elia Taniguchi

台風はただ過ぎるのを待つ。
汚いものも都合の悪い過去も水に流す。
人の噂も75日という
日本人の感覚のなかにある危険性が
いま問われている。
いまだにFUKUSHIMAが
綱渡りの状態にあり
原発難民としか言いようのない
国家的に深刻かつ悲惨な事態が
進行中であるにも関わらず
安全を確認したなどという
相も変わらぬ破廉恥極まる虚言を弄して
せっかく止まっている原発を
電力会社や官僚や国会議員や自治体や
古い成功モデルの奴隷のような経済界や
既得権益者たちの思惑によって
さらには無責任な思考停止によって
一刻も早く再稼働しようという
国民の心や安全を全く無視した
危険極まりのない動きが
急に高まっている。
3分の2が止まっていても
もしかしたら全部が止まっても
なんとかなるではないかという当たり前の現実が
国民の目に明らかになってしまう前に
なんとか動かしてしまおうという
ことなのだろう。
想定外などという嘘で
すべての責任をうやむやにしてきた電力会社や国は
いったいいつの間に
かつては想定外と言い逃れたかもしれないが
すでに起きてしまった以上
もはや想定内である規模の
巨大地震にも耐えうる耐震基準を算定し
それを満たす処置をほどこしたのか?
想定外の規模で起きてしまったという津波の
その猛威に耐えうる対策を
いったいいつの間にほどこしたのか?
もともと信頼の上に成り立つはずの
言葉という人間の文化的な財産を
ここまでおとしめては
地獄の閻魔様でさえ絶句するだろう
それと同時に
ここで考えなければならないのは
原発という一触即発の危険と背中合わせの
また廃棄物の処理の仕方さえわからない
巨大な欠陥プラントが
原爆が落とされた国になぜ54基も
あるのかということだ。
104基の原発を持つアメリカ合衆国は
日本の24倍余の国土を持つ。
小さな島国でありながら
アメリカの3分の1以上の民が密集するこの国に
なぜそれだけの数の原発が
現実的にあるのかということだ。
これは手短に言えば
日米安保という
アメリカ主導の国家戦略によって
核の傘に守られているではないかという
セールスポイントに押し切られて
あるいはその利権のおこぼれに
群がろうとした棄民的やからの思惑もあって
金食い虫の巨大で高額な欠陥商品を
唯々諾々(いいだくだく)と
買い続けてきたからにほかならない。
たしかに
原爆を受けた世界で唯一の民であり
また身を挺して仕事に尽くす
器用で頭の良い民の国で原発を作動させれば
日本の民はそれこそ必死で
事故が起こらぬように
起きても何とかすることに尽力するに違いない。
それは商売のうま味に加えて
津波も強い地震も想定しない原発プラントを
平気で売りつけたアメリカと原発企業にとって
まさに格好の実験の場にほかならなかった。
廃棄物の処理すら出来ないプラントは
そもそも商品とは言えない欠陥商品だが
そんなものを
言われるままに買い続け
それを推進するために
かつてのソビエトさえ呆然とするような
時代錯誤の民間国営独占企業という
奇妙な仕組みを存在させ続け
これからも存続させ続けるというような無謀は
一刻も早くリセットすべきだ。
しかもこの事態に及んでなお
国や電力会社は
原発の再稼働の理由に
村や街や県などの
地方自治体の許可を取り付ければ済むと
考えているふしがあるが
それは
横暴で無責任で不遜も甚だしい。
それは相手が小さければ小さいほど
扱いやすいと考え
民の中に亀裂が起きて
相手の力が弱くなることを見越し
そのようにして無理を通して既成事実を積み上げ
金のしがらみで民を縛ってきた
これまでのやり方そのままだ。
農民に対して漁師に対して過疎地の住民に対して
この国は
そんな破廉恥な横暴を押し通してきた。
それをもはや続けさせてはならない。
言うまでもなく
すべての国土は町や県の境を越えてつながっている。
もちろん空気も海も
国を越えた地球という
たった一つの生命の星の貴重な環境であり
原発が起こす問題は
狭い範囲の責任を遥かに超えている。
万が一高濃度の汚染水がひとたび
太平洋に流されてしまえば
取り返しのつかない国際的な事態を招く。
しかも放射能は
場所ばかりか時すら超えて
人類に致命的なダメージを与え続ける。
今回の事態で明らかになったことは
原発は
もはや一国の事情や利害をはるかに超えた
人類史的危機をはらんでいるということであり
科学万能という
近代の迷信の産物である恐るべき欠陥商品は
核兵器とともに人類史的な
20世紀の恥ずべき失敗物として
一刻も早く
廃棄するしかないということであり
その廃棄物の処理に全知全能を
傾けるべき時期なのだ。
時代錯誤の詭弁や迷走や
更に過酷な事態への愚かなおぜん立てを
もうこれ以上続けるべきではない。